2010年7月19日月曜日

オープンとクローズドとクラウドと


連休中なのでたまには真面目に。

オープンvsクローズド

SiemensJPさんのTwitterにFortuneさんの記事がつぶやかれていました。

http://www.parsintl.com/21037.pdf

とても大雑把な要約

クライスラーは、ダッソーからシーメンスにCADを切り替えた。
切り替えはクライスラーだけじゃないかもしれないぞ、どうする?ダッソー!

ダッソーはさ、業界のトップにいるけど(アップルのように)顧客を囲い込み過ぎじゃないのか?(そんなことしてるからBMWもNXのテストを始めたぞ。)

クローズドな仕組は、うまくいけば(アップルのように)巨額の利益を生み出すけど、顧客がついてけない!と判断すればまとめて離れていっちゃう。自動車業界はデータを共有しやすい仕組みを作りたがっているから、今のままのダッソーじゃまずいよね。

記事の趣旨は、ダッソーは顧客を囲い込むのではなくオープンになった方がいいよ、ということですかね。ここでいうオープンとは、ソースコードを公開しろとかそういう意味ではなく、他のシステムと共存できる程度に仕様なりデータなりを公開しようよ、ということだと思います。

シーメンスさんがこの記事をつぶやいたのは、ダッソーさんが少し弱ってるぞ、という内容に加えて、私たちはJTというオープンフォーマットを持っていますから(キリッ ということもあると思うのですが、記事の中では触れられてないですねw

それと、ダッソーさんから顧客が離れていきつつあるという例がいくつか出てきますが、その中のクライスラーさんがNXに切り替えた例は、記事にもあるように、NX使いのフィアットさんのプレッシャーが一番だと思います。オープンとか他の事は関係ないような…

おまけに、クライスラーさんの結果として、デトロイトではParasolid大勝利wwwとなったようなので、回りまわってクローズドな状態になっている気がしないでもないですねw

WorldCAD Access : Parasolid takes over Detroit

 

ダッソーさんがクローズドな仕組みになったのは、IBMさんのおかげで業界トップにいるからだと思うんです。俺たちトップ!となれば囲い込む方向に進むのは当然です。トップでないシーメンスさんやPTCさんはトップの顧客も取り込まないといけない → 他CADデータにも対応しないといけいない → ダッソーさんよりもオープンな仕組みになったよ、ということだと思うのですよ。

最初は提灯記事なのかと思ったのですが、読んでみるとそうでもなくて、内容には同意できました。実感としても囲い込み云々は、そーだねー、という感じです。PLMは、アップルのようにコンシューマー向けではないですし、Jobs総帥のようなカリスマがいるわけでもないので、パラダイムシフトというほど大袈裟な状況にはならないでしょうが、CADの世界もオープンとクローズドのバランスを見極めながら舵を取らないといけない、という時期に移ってきているのは確かなのでしょうね。

 

連休中なので今日は長いですよw

 

クラウド

Fortuneさんの記事と同じくして、シーメンスさんからクラウドに関するプレスリリースがでています。

クラウドwatch : シーメンスPLMソフトウェア、業界初「クラウド」ベースの品質管理ソリューションの開発を発表
*2010/7/19時点では、SiemensJPさんのサイトにこのリリースはないですね。米国Siemensさんにはありました↓
Siemens : Siemens PLM Software to Create Industry's First Quality Management Solution "in the Cloud"

Windows Azureを基盤にしてTecnomatixの機能の一部をクラウド上で提供するよ、ということだと思います。(相変わらずの難解なプレスリリースw)
シーメンスさんは、Windows Azureをクラウドのベースにしていくのですね。無難と言えば無難な選択です。他のベンダーさんの動きを見ると

@IT : SolidWorksがついにクラウドへ
upFront.eZine : Autodesk Centaur and Cumulus
和訳:海外CAD事情

オートデスクさんは、Project Butterflyというのも含めて、Amazonを利用しているようです。Solidworks(ダッソーさん)は自社ですかね?Exaleadという会社をまったく知らないので憶測ですが、検索エンジンの会社を買収したわけですから、堅牢なデータセンターと負荷分散などのノウハウも自社で所有したんでしょうね。(こんなところまで囲い込まなくてもいい気がしますが。)

Dassault : ダッソー・システムズ Exalead を買収
(言葉はわかりやすいですが内容はわかりにくい気がしますw)

クラウドに対しては、ソフトウェアおよびデータがローカルのハードではなくベンダー(またはベンダーの契約先)のデータセンターに行ってしまう、という不安を漠然と感じています。いつでもずっと見たい時にデータを見ることができるのか?契約を解除するとクラウドにある自分のデータにはアクセスできなくなるのか?データにアクセスできてもCADが使えなければ見ることはできないのか?と、次から次へと不安が湧いてきます。(今でもCATIAは保守契約を切るとCADが使えなくなる、と聞いていますから、ある意味CATIAを使う権利を毎年買っている、というクラウドを先取りしたような契約なのでそれほど変化はないのかもしれませんがw)

そんな私の不安とは関係なくw、今後数年間でCADの世界もある程度はクラウドに移行するでしょう。upFront.eZineさんでも触れられていますが、クラウドへの不安という点から見ると、オートデスクさんのProject CentaurとProject CumulusというCAEをターゲットとしたクラウドアプリは、クラウドへの不安や抵抗が最も少ないところを狙ったよく考えられた方策だと思います。

CAEだけでなくCAMでも同じことが言えますが、モデルデータ自体は自分たちのところにあり、計算をクラウドに持っていく、というのは不安よりもはるかに大きなメリットがあります。CAEのメッシュやCAMのパスなどの中にもたくさんのノウハウがありますが、モデルや図面データそのものがクラウドに行く不安と比較すると格段に少ない不安(それ以上の期待)から移行が実現しやすい気がします。計算中という札をPCの前に立てなくてもいいわけですしw

ここでオープンとクローズドに話を戻すのですが、この流れのままCAEからCAM、最後にはCADがクラウドへ移行していった時、私に限って言えば、データ形式がオープンになっていれば、ソフトウェアやデータに対するクラウドへの不安のかなりの部分が無くなります。オープンな規格のデータであれば、ダウンロードさえしておけば(ローカルでもクラウドでも)他のCADへの移行がスムーズに行えます。お高いダイレクトトランスレータなどを買わなくてもいいわけですよ。

MS OfficeのXMLほどではないにしても、CADを含め各種データがオープンになるというのはユーザ側からすれば何かとメリットが多いですが、アプリ移行の敷居が下がるので、どのベンダーさんも進んではやらないでしょうねw

Open vs Closed and Cloud これからは、この3つのバランスをとりながら、CADもCAMもCAEも激しく変化していくのでしょうね。

 

連休中なのでこのブログ始まって以来の長文を書いてみました。慣れないことをしたせいか眠くてしょうがありません。次からはネタメモに戻ります。

0 件のコメント :

コメントを投稿